局地的大雨: 2012年7月26日の例
この日、16時40分頃に京都府八幡市および城陽市、17時半頃に大阪府枚方市、京都府京田辺市から精華町に、18時頃に京都府亀岡市の南部に、強い雨をもたらす雲が現われ、数十分間の間に集中的に雨を降らせた後に消えました。このうち17時半から始まった局地的大雨では、高度5 km付近に「豪雨のタマゴ」とも呼ばれるファーストエコー(ここではレーダ反射強度30dBZのエコーとして定義)がはっきりと観測され、それが落下して約10分後に地上に降水が達することで雨が降り始め、その時に上空で発達中のエコーにより強い雨が30分近く降り続きました。
この日の天気概況は、本州は夏の高気圧に覆われ、沖縄から北海道まで広く晴れており、猛暑日や真夏日になったところも多かったようです。大阪地方は、海から陸に向かって弱い(5m/s以下の)風が吹いており、夕方までは天候は快晴でした。
1.2012年7月26日の例1
16時40分頃始まった局地的大雨の成長から衰退までの様子を紹介します。動画1は2102年7月26日16時40分から50分間の動画です。

この事例のファーストエコーは小さく弱いため目立たず、高さは5kmよりやや低い位置に発生しました。この弱いファーストエコーは一度降下し、再び上昇するように成長していきます。20分後、非常に強い降水(動画のオレンジ色の部分)が地上に到達します。降水の高さは10kmにもなりますが、水平スケールは大変小さく、オレンジ色の部分の直径は地上で最大直径約3km程度です。降水システムは東西に伸びた形をしています。また、わずかですが南東に移動していました。
2.2012年7月26日の例2
動画2は、17時30分近くに始まった局所的大雨の経過を表します。全体の時間の長さは約40分で、高度約5kmに強いファーストエコーが現われた後、降水が急速に発達して豪雨をもたらしました。例1の衰退した場所より数km西で降水が発生しました。

動画2の最初で高度約5kmに縦に細長いエコーの強い部分が現れます。これがファーストエコーです。フェーズドアレイ気象レーダは観測の時間間隔が30秒なので、ファーストエコーからどのように降水システムが成長していくかを詳細に捉えることができます。この例は特に降水の発達する様子がはっきりわかる例です。最初のファーストエコーはそのまま落下しますが、その直ぐ左側に発生した次のファーストエコーが急激に成長して高度10kmの高さにまで達します。この上空の強いエコーすなわち上空に溜められた大量の雨がこの後で滝のように地上に落ちてくるように見えます。レーダ反射強度は50dBZを超える部分もあり(50dBZは約50mm/hr)、局地的ですが非常に強い雨が降ったと考えられます。
3.2012年7月26日の例3
18時過ぎに鉛直に細長いファーストエコーが京都府亀岡市の上空約5kmに発生し、そこから徐々に南へ移動しながら降水が発達しました。降水システムの高さは10kmに達しました。最初の段階では、10km南側に発達した降水システムがありますが、これは例2で紹介したものです。これまでの例とは異なり、この例3では衰退するまでの1時間の間にゆっくりと10km南に移動して大阪平野の北端に到達しました(移動速度は2.8 m/s程度)。アメダスでは、このときの京都南西部(園部)では5 m/s以下の北西風が吹いていましたが、大阪平野の北端まで到達したときの大阪(枚方、能勢)では5 m/s以下の西風が吹いていました。降水システムの移動方向は地上風と一致するとは限りません。

このときの降水システムの様子を南西から捉えた動画が動画3です。ちょうど高度5kmを示す横軸を横切る形で縦長のファーストエコーが見られ、強いエコーが地上に達するまで約10分でした。エコーはファーストエコーの見られた位置より南側で強く現れていますが、北から北東側でも発達していきます。徐々に移動して最終的には大阪平野の北端で減衰していきます。
